ベヒシュタイン(C.Bechstein)

ベヒシュタインは、ピアノを愛する人々の間で最高の称号を得ているメーカーの1つであり、リストやワーグナー、ブラームスといった作曲家も数多くこのピアノを愛用し、彼らの表現したい音楽を創った名器である。

◆ベヒシュタインの歴史

創始者はカール・ベヒシュタインである。

1826年ドイツに生まれた彼は1844年までエアフルトの義兄のもとでピアノ製作の修行を行った。

その後27歳までイギリス、フランス、ドイツ国内を放浪し、19世紀に有名な会社であったプレイエル、ペロー、クリーゲルシュタインで働きながら、取引の仕方やピアノ製作を学んだ後、ベルリンに落ち着いた。

その土地で彼は、ピアノ工場を建てベヒシュタインを創業し、1853年には、はじめてのアップライトピアノを製作した。

最初は人を雇う余裕も無かったため1人で9ヶ月かかって作ったとのことである。

その後リストがしばしば、コンサート中にピアノを壊すという噂を聞きつけると、彼はアメリカで使用されていた弦を交差するシステムと、イギリスのピアノの力強いトーン、そしてフランスピアノの素早いレペティションを採用することで、近代の演奏に耐えうる、それでいてフランスピアノのような甘い音色のピアノを製作した。

このピアノがリストのお気に入りになり、ベヒシュタインの知名度は一気に上がったのである。

さらに、ロンドン、パリにおける工業博覧会において金賞、銀賞をとるなど、数多くの賞を得て、ピアノメーカーの地位を確固たるものにしていった。

特に音の素晴らしさもさることながら、構造的にスタインウェイが金属のフレーム、ベーゼンドルファーがピアノの外枠(箱)を鳴らすのに対してベヒシュタインはヴァイオリンなどのその他の楽器のように響板を鳴らすよう設計されていることから「ピアノのストラディヴァリウス」と呼ばれ、現在でもこのピアノは愛好家が多く、1度弾いたら他のメーカーのピアノは2度と弾けなくなる、などいわれるほどである。

その後第2次世界大戦が起こり、工場が燃えてしまった。

そのような悪条件の中から戦後1945年から生産を再開するが、敗戦国のピアノ会社だったため、アメリカのボールドウィンに買収されることとなった。

外国資本による経営が続く中、1986年ついにドイツのピアノ製作者カール・シュルツが経営権を買い取り、ベヒシュタインは再びドイツに戻った。

そして現在、普及用のZIMMERMANを含め、4ブランドを製作しており、2003年には創業150年を迎えた。

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◆ベヒシュタインと作曲家・演奏家

ベヒシュタインは多くのピアニストや作曲家、音楽家から愛された楽器である。ベヒシュタインに贈られた賞賛の声は調べれば書ききれないくらい出てくるので、その一部を以下に紹介しておこう。

リスト「28年間、私はベヒシュタインを弾いているが、その優位さはずっと変わらない。」

ハンス=フォン=ビューロー「ピアニストにとってのベヒシュタインは、いうなれば、ヴァイオリニストにとってのストラディヴァリウスやアマティである。」

ドビュッシー「ピアノ曲はベヒシュタインのためにだけ作曲すべきです。」

ケンプ「ベヒシュタインの時代に生きて幸せです。」

バックハウス「この魅力的なベヒシュタインの熱狂的な信奉者になれたことを喜ばしく思います。」

フルトヴェングラー「ベヒシュタインは特に高貴で力強く、それでいて甘く気品のある音、現在の間違いなく最高のピアノです。」

その他ブラームスカツァリス、ホルヘ=ボレット、ミケランジェリリヒテル、チック=コリアなどクラッシックのみならずジャンルを超えた数多くの音楽家から賞賛の声があげられている。

◆ベヒシュタインで録音されたCD

シプリアン=カツァリスは1951年フランス生まれののピアニストです。ジョルジュ・シフラ国際コンクールで優勝しました。現在も活躍するピアニストでベヒシュタインで録音しているピアニストは少なく、貴重です。

アルトゥール=シュナーベル、彼は戦前から活躍したピアニストです。録音としては1932年から1937年にかけて録音されたベートーヴェンのピアノソナタ集を紹介させていただきますが、現代にも通じる録音です。シュナーベルは1882年生まれのピアニストでやはりベートーヴェンに定評があります。