ドイツで最古のピアノメーカーであるイバッハは、6代に渡って世界中のピアノの粋を集めた世界最高のピアノを作ってきた。
◆イバッハの歴史
イバッハの創始者ヨハネス・アドルフ・イバッハは、1766年にバータンで生まれ、若い頃から遍歴を重ねてマスターとなった。そして1794年に自分のピアノ工房を持つに至った。
1804年に生まれた2代目カールは、21歳で工場を継ぐと、ヨーロッパを自分のピアノと共に周り、展示会に出品し賞と顧客を増やしていった。
1843年に生まれた3代目カールも、父と同様20歳で後を継いだ。彼はヨーロッパ中を回り、音楽家との交流を深めた。彼はワーグナーから、「親愛なる”音作りの達人、ルドルフ・イバッハ”氏に心からの感謝の意を表す」との手紙をもらっている。当時、彼の作ったピアノはリストなど多くの作曲家によって使われたといわれている。
さらに彼は、ピアノを単なる楽器ではなく芸術品としても価値をつけるため装飾に凝ったアートピアノを作った。他のメーカーも後に続き、現在多くのアートピアノが残っている。
イバッハは他のメーカーのように特許を取得したり、技術の開発では名を残していないが、代々ヨーロッパ中のメーカーから多くの製作技術を柔軟に学び、常に良いものを作り続けた。
◆イバッハを愛した作曲家~ワーグナー~
イバッハのピアノはリストやザウアーなど当時の多くの大ピアニストたちによって弾かれているが、中でも最もイバッハを愛したのはワーグナーだったのかもしれない。
ワーグナーはイバッハ3代目ルドルフ・イバッハ・ジュニアに対し、自分の等身大の写真とともに
「親愛なる『音作りの達人』ルドルフ・イバッハ氏に心から感謝の意を表す」
と1882年に送っている。